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5. 診療科目別開業のポイント

医院開業は診療科目ごとに物件や立地の選び方、診療スタイル、広告の仕方など、開業のポイントがある程度相違します。
以下、科目別にその例をご紹介します。

内科

診療所の約6割が標榜しているという、メジャーな診療科である内科。それなりに人口がある町の駅周辺には、ほとんどのところに内科の診療所が既に存在しています。

また患者さんも、一度自宅や勤務地の近くで受診した場合、余程のことがない限り、別の診療所にかかろうとは思いません。

そのため、物件選定にあたっては診療圏調査を十分に行い、住宅地でも比較的に内科クリニックが少ない場所、古くから開業していて診療時間を減らしている診療所があるエリアなどが候補地になります。

さらに患者さんに選んでもらうためには、いわゆるプライマリケアに加えて、たとえば下記のような、他院と差別化できる要素を訴求することが重要となります。

  • 糖尿病内科や内分泌代謝科、内視鏡内科など、専門性を前面に出してアピールする。
  • 精密検査や入院が可能な病院との連携で、より専門性の高い医療の提供を目指す。
  • 日帰り手術などを実施する。
  • 在宅診療を行う。
  • 休日や夜間の診療を行う。
  • 自治体の健診の実施。
  • 停めやすい駐車場や駐輪場を確保し、来院しやすくする。

上記のような診療が可能になるような、立地や広さの物件を選ぶことも重要になります。

また、糖尿病内科を標榜する場合は、管理栄養士による食事指導のスペースなどの確保、採血の技術が確かな看護師の採用、治療費が高額になる場合に備えてのクレジットカード対応などの検討も必要になります。

小児科

少子化により小児科専門医の数も減少していることから、小児科専門医であることが差別化につながる立地、エリアが理想の開業地になります。

具体的には小さいお子さんがいる若いファミリー層が多い住宅エリアとなりますが、子供服や玩具などの大規模チェーン店舗などが進出した場所は、集患が期待できます。

小児科では物件(建物・施設内プランなど)にもポイントがいくつかあります。

  • 院内感染を防ぐ隔離室を設けたり、救急対応を行うことができるスペースを確保できる。
  • 乳児健診室、授乳室、おむつ替えスペース、上のお子さんを遊ばせるキッズスペース等を設けるなど、実際に親御様の立場になった内装プランとなっている。
  • バリアフリーで、ベビーカーのまま受診できる。
  • 親子で来院するので、待合室はなるべく広く確保する。
  • 駐車場は車からお子さんを下ろしたりするので、1台あたりのスペースをなるべく広く確保できること、と同様に駐輪場も広く確保できる。

他の小児科だけではなく、耳鼻咽喉科も競合する場合があるので、診療圏調査の際には事前に考慮しておく必要があるでしょう。

整形外科

社会の高齢化に伴って、運動器に障害をきたす患者さんが増加しています。
リハビリ治療の需要も大きくなり、整形外科への要望も高くなってきています。
そこで整形外科の開業で特に注意したい点が以下となります。

  • 待ち時間が長くならないか
  • 予約は取りやすいか
  • リハビリ機器は古くないか
  • 理学療法士や作業療法士などのスタッフの質が高いか(親切・丁寧か)

上記のような点で満足していただけないと患者さんが離れていく場合もあります。
そうしたことを踏まえて、開業にあたり動線やスタッフの動きを効率化し、スムーズな診療ができる配置、そしてスタッフ教育が重要になってきます。

同時に比較的に診療報酬が低い診療科ですので、より多くの患者さんがストレスなく待てるよう待合室は広く確保する必要があります。さらにリハビリ機器を充実させることができる広さ、ウォーターベッドを設置する場合はフロアの耐荷重が満たされていることなどをチェックすることも重要です。

上記以外にはバリアフリーにできること、2階以上の場合はエレベーターがあることが必須となります。
また、駐車場の台数を確保できることもポイントとなります。

接骨院、鍼灸院も競合となる場合がありますので、診療圏調査の際は配慮しておく必要もあります。

眼科

眼科は白内障などを患った高齢者からドライアイの治療、コンタクトレンズの処方等を求める働き盛りや学生といった若い世代、さらに小児のプールでの結膜炎等まで年齢層としてはターゲットが幅広く、比較的診療圏が広い科目と言えます。

とくに白内障手術などの外来日帰り手術をする場合は、公共交通機関をスムーズに利用できる立地であることが求められます。
駅近にはすでに眼科が開業されていることも少なくないので、少しでも良い条件の物件があれば早急に判断することが重要でしょう。

コスト面においては日帰り手術を行うかどうかで大きく変わります。
手術関連機器の導入やその設置に必要な広さの確保、また暗室をしっかり作れるかなど、開業計画に関わってきます。
他院との差別化を踏まえ、どういった診療を展開していくか、どういった患者さんをターゲットにしていくか、ということを考え合わせて計画を立てていくことが大切です。

近年、生活習慣病である糖尿病による糖尿病性網膜症も問題となっています。糖尿病内科などと連携していくことも考えたいものです。
またコンタクトレンズに関しても、スムーズに患者さんに適切なレンズをお渡しするために、コンタクトレンズ取扱会社と常に最新の情報共有を行い、迅速な供給体制を作っておくことも重要です。

皮膚科

皮膚科に関してはどんな診療内容にするかによって計画が大きく変わってきます。
一般皮膚科のみであれば設備投資もそれほど大きくならず、スタッフも受付のみで開業可能となります。
ただ、保険診療が中心となると、診療報酬の単価が高くないため、比較的多くの患者さんを診ることになります。
そのため待合室なども広くしておいた方がいいかもしれません。

近隣に皮膚科が無く、乗り降りがある程度見込めている駅の近くであれば集患も望めます。
周知が容易な医療モールも選択肢のひとつになります。
皮膚科は乳幼児の来院もありますので、親子での受診を意識し、授乳室やおむつ替えのスペースなども用意しておくといいでしょう。

小手術の実施やレーザーの導入、自費診療による美容系やAGAなども行う場合は、機器の導入やスペースの確保などの必要があり、収益性は期待できますが、初期投資も大きくなります。
特に美容系を手掛ける場合はパウダールームや更衣室など、内装にある程度費用を投下する必要があります。

耳鼻咽喉科

診療圏調査に当たっては近隣に耳鼻咽喉科がないことはもちろんですが、小児科も競合となる場合がありますので考慮する必要があります。
その一方、小児科の診るべき疾患について連携を取ることで集患につなげるのも一考です。

小学生が一人で通うことも多い診療科であるため、大通り沿いであれば歩道が整備されているなど、なるべく安全・安心に通える立地であることが望ましいと言えます。
また騒音も影響しますので比較的静かな立地、あるいは防音がしっかりとした建物であれば、内装費用を抑えられます。

中耳炎や鼻炎等、日帰り手術といった外科系治療も行いますので水回りのチェックは必須となります。
待合室もお子さんたちが飽きないように工夫したり、感染症対策を考えたゾーニングも重要になります。
ドクターやスタッフの雰囲気も含め、お子さんが通院しやすい環境づくりが大切です。

婦人科

婦人科は女性が一人で通いやすいかどうかが重要になります。
また子宮がんなどの婦人科検診も大きな収入となりますので、住宅地を控えた地域が望ましいでしょう。

婦人科の場合、特に若い女性の受診に対する抵抗感を軽減するために、院長のメッセージなどを充実させ、受診の後押しとなる情報を発信することが大切です。
院長が女性の場合は、特にアピールポイントとなります。

産科や不妊治療まで行う場合は、診察以外の部分のスペースも確保する必要があります。
産科の場合は分娩室に加え、産後に過ごす部屋、助産師等とのコミュニケーションルーム、プレイルームなど、総合的に考えていかなければなりません。

不妊治療では体外受精まで行う場合は、高度に管理された環境が必要になり、それが可能な物件を選択しなければなりません。
当然コストもかかりますが収益とのバランスを考え、治療範囲を決めていくことが大切です。

精神科・心療内科

ストレス社会が進行する中、働き盛りの世代にも精神疾患が増えています。
企業においてもストレスチェックが欠かせなくなり、今後も需要が増すことが考えられる診療科です。

設備投資は他の診療科に比べると少なく済む場合が多いのですが、一人一人の患者さんにかかる時間が長くなるため、時間予約制やカウンセリングルームの設置等、効率も考える必要があります。

立地は通常のクリニックとは違い、プライバシー確保のため、人通りが少なく目立たないこと、あるいは患者さんの出入りがわかりにくいことなどが条件となります。たとえば他のフロアに人の出入りが多い業種のテナントが入っているなどのビルも条件に当てはまります。

一方、室内はプライバシーが保たれ、リラックスできる待合室など、落ち着いた内装が求められます。
ホームページなどでプライバシーがしっかりと守られること、併せて院長の人柄などを伝えていくことも重要です。

心療内科は需要も増えていますが、開業数も多くなっています。
差別化を図るためには、専門性のアピール、たとえば社会不安症や不眠症、摂食障害、アルコール依存症などを強く打ち出していくこともひとつの方法です。
また高齢者の認知症、お子さんの行動障害などを診療領域にすることも考えられます。
前者であれば駅近の立地、後者であれば住宅地の近くなど、それぞれのターゲットに応じた立地の選定が重要になります。

泌尿器科

一般的に泌尿器科は受診の際に恥ずかしいと感じる患者さんが一定数いらっしゃいます。
特に女性にその傾向があります。
現在では泌尿器科を標榜する女性医師や男女それぞれの医師が在籍するクリニックもあります。
女性医師が診療するということは、女性の患者さんに対して、大きなアピールポイントになります。

診療報酬は比較的高めなので予約制を導入し、待合室の広さを抑えることは可能なのですが、男女の動線を分けるなどの配慮があると集患につながる可能性があります。
またトイレを含めた水回りは物件確認の際に十分に確認しておく必要があります。

外科的治療が必要になる場合があるので、近隣病院との連携を確立しておく必要もあります。
またホームページによる集患は重要で、女性医師の場合は強調し、男性医師の場合でもしっかりとプライバシーを守って診療する旨をアピールした方が良いでしょう。

脳神経外科

脳神経外科の場合、CTやMRIなどの検査機器を導入する場合と導入しない(外部の検査機関などを活用する)場合とで大きく条件が変わります。
自前の検査機器があれば検査してすぐに診断結果を患者さんに伝えられ、喜ばれるというメリットもありますが、検査機器自体が高価で維持費もかかる上、物件に際しても大きな制約があります。

戸建てや建て貸し等の物件で、新築の際に搬入・設置できるのであればよいのですが、テナント開業の場合は1階である必要があり、開口部より搬入できなければ、一部壁を壊す必要も出てきます。
また耐荷重の問題もクリアしなければなりません。
設置した場合は、近隣の整形外科等からの検査紹介を受けるなど、検査数を確保することが重要になります。

脳血管疾患等からのリハビリテーションもニーズの大きい分野ですので、収益が期待できます。
ただし実施する場合はリハビリのためのスペースや機器の確保、各種療法士を採用した際の人件費など、コストは高くなります。
ハード、ソフト両面の環境が充実すれば集患は期待できますが、通所リハビリも行うなど、リハビリテーションを受ける患者さんの集患は常に考える必要があるでしょう。

立地および物件に関しては、診療コンセプトを鑑みて、ターゲットとなる患者層が存在する地域を検討していくことが重要です。
検査機器を入れる場合はそれなりの広さが必要ですし、リハビリを行う場合は、バリアフリー化、エレベーター、駐車場の確保が必要になります。

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